日本文化領域の「核」となる3分野

なぜ大学で「日本語?日本文学」を学ぶのか

日本文化領域のゼミナールでは、日本語学、日本近代文学、日本古典文学のいずれかを選んで学びます。
身近にある日本語を見つめ直し、日本の社会や文化を映し出す文学を学ぶことによって思考力が深まり、演習形式の学びによって調査?分析力、考察力、表現力などが身につきます。これらの力は、社会に出てからも役に立つ実践的な能力です。
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なぜ3分野(日本語学?日本近代文学?日本古典文学)を学ぶのか

それぞれの分野は連関して、社会?文化を知るための重要な知識の土台を作ります。3分野を学ぶことで広い視野を得ることができ、物事を多角的に捉えることができるようになります。
1年次後期の「日本文化入門演習」では、3分野それぞれの特徴や学び方を紹介します。また、1年次前期?後期で学ぶ専門基礎科目(プレプログラム)では、3分野の学びに必要な基礎的なスキル?知識?考え方を修得することができます。
日本文化入門演習_4分割
「日本文化入門演習」(1年次選択必修科目)
日本文化領域ではどのようなことが学べるのかをオムニバス形式で紹介します。日本語学、日本近代文学、日本古典文学に加えて、関係性の深い分野である日本史学(文化史領域)についても学びます。それぞれの分野に関わるテーマやトピックを学問的に考究するおもしろさ?楽しさを体感し、学生相互の意見交換を通して他者と協働する姿勢を培います。
■3分野の特徴を知ろう

日本語学ってどんな学問?

日本語学は、日本語を一つの「言語」として調査?観察し、規則性を見つけ出す学問と言われています。高校までの国語ではあまり扱われることのない学問分野です。
日本語学の研究対象は、学校やマスコミの「正しい日本語」や、文学作品の「美しい日本語」だけではありません。方言(地域によって異なる日本語)、古語(時代によって異なる日本語)、若者ことば(世代によって異なる日本語)、さらには誤用の日本語まで、あらゆる日本語が研究対象です。
たとえば、時代劇に出てくる「ござる」は高校の古文では習いませんが、いつから使われていたのでしょうか?「くるくる」と「ぐるぐる」、「きらきら」と「ぎらぎら」は濁点の有無にどんな規則性があるのでしょうか? このような日本語に関する身近な疑問を出発点にして、文献やデータベースを調査し分析していきます。
つまり、日本語学とは、データを科学(サイエンス)する上で、AIにはできない最も人間的で創造的な「問い」を日本語について立てる学問でもあるのです。


近代文学はどのように読むの?

小説は、今とは違う場所?違う時代を見るために開かれた、窓のようなものです。それらは作家たちの意図をも超え、その時代?社会の精神を深く刻み込んでいます。
谷崎潤一郎『痴人の愛』のナオミはカフェーの女給ですが、彼女たちは一体どんな暮らしをしていたのでしょうか。同時代のプロレタリア作家?佐多稲子も女給を小説に描いています。女性作家がとらえた女給像と比較すると、谷崎には見えていなかった昭和期のリアルな女性たちの生活がみえてきます。
戦争や植民地などとっつきにくそうなトピックも、日本租界に暮らす日本人少女の目で戦時下上海を描いた林京子の作品、戦後アメリカ占領下の沖縄における理不尽な生活を高校生の娘を持つ沖縄人の父親の目から描いた大城立裕の作品などを読むと、とたんに鮮やかな時代状況が浮かび上がってきます。
大学の近代文学研究では、本文読解はもちろん、作家を知り、資料を読み、同時代の新聞記事なども調べたりすることで、改めて作品に向き合い、書かれた時代と場所の思考?時代精神の中に飛び込みます。作品だけを読むのではわからない、同時代のものの見方?世界観に触れる体験そのものが、文学研究の面白さです。

なぜ古典文学を学ぶの?

この問いに対して、在学生から次のような回答が寄せられています。

  • 中高の頃に作った土台をもとに大学で改めて古典を学ぶことで、新しく得た視点から物事を考える力を養えるから
  • 過去の人々の考え方や歴史を学ぶことで現在との違いを比較し、これからに活かしていくことが出来るから
  • 日本のことをより深く知ることができるので、海外の人と交流を持ったときに自国について自信を持って紹介することができるから

学生たちは、「今」の国際社会を生きるために、古典を学ぶことの意義をしっかり踏まえて学びを深めています。
そもそも、大学での古典の学びは、文法の学習や現代語訳にとどまりません。

  • かぐや姫が発見されるのはなぜ竹の中という設定?
  • 悲劇のヒーローとしての源義経像はどのようにして成り立った?
  • 文学における「鬼」は時代によって描かれ方が異なる?

古典を読むと、現代から遠く隔たった時代に成立した作品だからこそ、次々に疑問が湧いてきます。その「問い」に対して、当時の歴史?文化?思想を踏まえ、古典本文の中に「答え」を見つけていくことが古典文学を学ぶおもしろさです。長い年月を生き抜いてきた古典には、あらゆる問いに答えてくれる力があります。たくさんの問いを投げかけることで、思考力を高めることができるのです。

調査?分析手法、考察力の身につけ方

2年次の「基礎演習」、3年次の「演習」では、自分で調べ、考え、まとめ、発表するというステップを経験してもらいます。それは、卒業論文に向けての段階的な学びであると同時に、論理的な思考力やプレゼンテーション力という、これからの人生に役立つスキルを高めるための訓練でもあります。
古典文学はどのように学ぶの