文化史領域の「核」となる4分野

なぜ大学で「文化史学」を学ぶのか?

文化史領域のゼミナールでは、歴史、美術史、宗教史、思想史のいずれかを選んで学びます。対象とする地域も、日本、東洋、西洋から好きな地域や国を自由に選択できます。複数の地域を比較することも、地域横断型の学びにチャレンジすることも可能です。

「文化史学」という枠組みは、学び方の可能性を広げるだけでなく、物事の本質的な理解に迫る手助けとなります。人間の代わりにAIやロボットが何でもする時代が近づきつつある現代だからこそ、改めて「人間とは何か?」が問われることになるでしょう。人間の内面や感覚に深くアプローチする「文化史」は、まさに現代人に必須の学問体系といえます。

なぜ4分野(歴史?美術史?宗教史?思想史)を学ぶのか

文化史領域の「核」となる4分野は、それぞれが独特の個性と魅力を持っています。いずれの分野でも、調べる力、読み取る力、考える力、表現する力を伸ばすためのプログラムが設計されています。また、史料、美術作品、建築、教典などをじっくりと自分の眼で観察し、それらの裏側に広がる過去の世界や人間の姿を想像することで、物事の本質を捉える力が養われます。こうして培われた力は、歴史や文化を探究するときだけでなく、社会を生きていくうえで必要な他者理解の力にもつながっていきます。
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文化史入門演習
「文化史入門演習」(1年次選択必修科目)
文化史領域の多様な学びを体験する入門型の演習授業です。文化史領域を構成する日本史?世界史?美術史?宗教史?思想史に触れ、それぞれの分野がどのような問題を取り扱い、それらをどのように研究するのか、討論や発表を通して文化史領域の特徴を学びます。少人数の演習形式で進むため、文化史研究のおもしろさと楽しさをじかに体験することができます。グループディスカッションや発表を通じて主体性を育み、文化史研究のテーマに即しながら思考力と表現力を鍛える入門型の演習授業です。

■4分野の特徴を知ろう

歴史学(日本史?東洋史?西洋史?地域横断史)はどのように学ぶの?

歴史を学ぶということは、これまでの人間の営みを考え、その背景を探ることです。みなさんはこれまで、学校の授業で歴史上のさまざまな出来事や人物について学んできたと思います。ここからは、当時の人たちが残した史料を読み解くことで、さらにその奥深くへと分け入ることになります。特定の国や地域にしぼったり、または地域と地域を比較したりしながら、歴史上の出来事の背景や意味を考えていくことになります。歴史を学ぶことは、今、自分がいる社会の成り立ちをつかみ、そして現在の世界のあり方を理解することにつながります。自分で疑問を持ち、史料を分析して解決する力は、社会に出てさまざまな課題と向き合う際に必要な能力となります。

日本史でも、東洋史でも、西洋史でも、あるいはそれらを横断する歴史でも構いません。好きな時代や人物のことを調べたり、考えたりしながら、物事を解釈する力と確かな思考力に磨きをかけるのが歴史学の醍醐味です。
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なぜ美術史学を学ぶの?

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なぜ美術史を学ぶのでしょうか?デジタルが主流となる現代社会において、「モノ」の歴史を扱う美術史はちょっと古めかしく感じるかもしれません。
でも、ちょっと考えてみてください。美術館や教会?寺社仏閣などの史跡におかれている芸術作品は、みなさんが生まれるはるか以前に作られたものがほとんどです。目の前にある「モノ」は、何百年も前に「だれか」がそれを作り、「だれか」がそれを前にして祈ったり、考えたり、飾ったり、楽しんだりしたのです。

作者がだれか、作品が何を表しているのか、という知識を得ることはもちろん、作品そのものも今ある場所にくるまで、様々な人の手をわたってきている事実も大切です。作品そのものにも、人の生きざまのように、制作されてからあなたの目の前にあらわれるまでの歴史があるのです。作品の歴史には、それと関わってきた人々の想いが反映されています。それを今わたしたちが共有することができたらワクワクしませんか?そんな「ワクワク」を追求するのが美術史です。

宗教史学ってどんな学問なの?

日本には、世界のさまざまな国?地域の料理を提供するレストランがあります。日本に住むさまざまなルーツを持つ人たちが、どのような食事を食べているかと考えたことはありますか?また、そうした人たちがどのような祝日を祝っているか、ご存じですか。 実は、こうした日常的な行動も宗教文化に根差したものであることが少なくなく、宗教史という学問の考察対象になっています。
また、みなさんは初詣に行ったり、お墓参りに出かけたりしますか? 合格祈願や交通安全のお守りを買ったり、占いをしたりすることはありませんか? こうした行動も、宗教史の研究対象となっています。

宗教史は、さまざまな宗教の歴史を学ぶ学問です。宗教がどのように始まり、どのように変わりながら現代に至ったかを研究します。また、宗教の教えや習慣を比較することから「比較宗教学」と呼ばれることもあります。

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宗教史では、例えば次のような問いについても考えることができます。
  • 宗教の教えは、時代や地域によってどのように変わってきたの?
  • 世界の人々は、死後の世界をどのように考えてきたの?
  • 宗教は平和のためのものではないの? それなのに、なぜ宗教が関わる戦争が起きるの?
  • 人びとはどのように自分にルールを課しているの? そのルールには、法律だけでなく、宗教も関係しているの?

こうした宗教をめぐる問いにトコトン挑むのが宗教史学です。

思想史学ってどんな学問なの?何が身につくの?

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みなさんにとって「あたりまえ」のことはどれくらいあるでしょうか?ちょっとした言葉や概念、あるいは考え方や生き方にいたるまで、私たちの身近には様々な「あたりまえ」があります。ですが、そんな「あたりまえ」の背後には、実は長い歴史や、様々な思索が存在しているかもしれません。

例えば「美」という概念について考えてみましょう。私たちはしばしば何かを「美しい」と思うことがあります。ですが「美しい」とは一体何なのか?あるいは、「美しい」ということにどのような意味があるのか?というような、美の意味や価値をめぐる考え方は時代や文化、地域によって様々に変化してきたのです。古代ギリシャやローマでは、美は「調和」や「秩序」といった普遍的な理想を表すものと考えられてきました。しかし現代では、多様性や個人の感覚が尊重され、何を美しいと感じるかは人それぞれだとされています。

思想史学では、様々な時代、様々な状況のなかで、人々が何を考えてきたのか、どのように人間のありかたや世界を理解してきたかを探ります。それによって、私たち自身の「今」や「未来」を理解する手がかりを得ることができるかもしれません。また、物事の「そもそも」に立ち返り、深く考える力は、社会で生きていくためにも重要なものとなります。

「文化史学」4分野の探究で何が身につくのか? 

1年次後期の「文化史入門演習」、2年次の「基礎演習」、3年次の「演習」へと段階的に学びを積み上げていくなかで、自分の研究テーマを見つけ卒業論文を書き上げる力が養われます。この過程で身につく課題発見力、調査分析力、思考力、討論力、表現力は、生涯にわたって必要な汎用的能力の土台となります。さらに「文化史学」では、一般的な文学部に置かれる「史学」とは異なる視野の広さを強みとしていますので、多様で柔軟な学びを通して人間的なスケールアップを図ることができます。
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